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二人藤娘/日本振袖始 [歌舞伎]

シネマ歌舞伎の「二人藤娘/日本振袖始」を観てきました。

二人藤娘は玉サマと七之助。
華やかですなぁ。
最後、花道を引っ込むところなんか、ため息が出るような美しさ。
そして幕が下りた後に暗い通路を楽屋へ向かう二人の後ろ姿がまた良かった。
こういうのが見られるのは舞台ではなくシネマ歌舞伎ならではですね。
舞台の幕が上がる前に長唄さん(?)たちにご挨拶をするのも知らなかったなぁ。
美しい所作です。

「日本振袖始」は素戔嗚尊の八岐大蛇退治を題材にした舞踊劇。
玉サマ演じる八岐大蛇は岩長姫が鬼になったという設定で、お姫様の姿で現れるのですが、持っている扇子や帯は鬼の役が身につけるもの。表情もどことなく険しい。姫の中に蛇が見え隠れしています。
ヒロイン稲田姫の米吉くんの可愛らしいこと!!
ヒーロー素戔嗚尊の勘九郎の晴れ晴れと凛々しいこと!!
スサノオって本来は父や姉に疎まれてひねくれたキャラのはずなんだけど、勘九郎の素戔嗚尊はまっすぐ育ちましたー!といった感じの貴公子然とした若武者。見ていて気持ちがイイです。

後半、八岐大蛇になってからの玉サマの顔が凄まじい。さすが。藤娘と同じ人とは思えん。
同じ装束の7人を使っての演出が面白い。
8つの頭や、長い蛇体を表現しています。

2100円という料金は一般の映画と比べると高いかもしれないけど、歌舞伎座へ行って舞台を観ることを考えると、お手軽でいいですね。
生の舞台でしか味わえない面白さもあるけどね。






ただいまの三国志 [本]

ただいま、吉川三国志は劉備がしれっと蜀へ乗り込んでいったところです。
横光は周瑜が死んで、劉備一味が荊州南部を奪い取るところ。

いやー、吉川周瑜いいね!
今まで周瑜って全然興味なかったけど、今この時点で「三国志で誰が好き?」って聞かれたら周瑜って答えるかもしれない。
「どこが好き?」
「すぐ興奮して血を吐くところ[黒ハート]

完全に孔明にコケにされてますね。
改めて読むと、孔明ってホント性格悪いね!
周瑜のことバカにしすぎだよね。

呉の立場からすると、劉備一味ホントひどい。
赤壁で実際に戦ったのは呉の皆さんなのに、しかも曹操と戦う羽目になったのって劉備のせいなのに、戦利品としての荊州を孔明に乗っ取られ、頼みの綱の大都督周瑜は「おのれ、孔明~~がはっ」って死んじゃうし。
気の毒に……

蒼天航路は荊州に攻め込んできた曹操の大軍から劉備と民衆たちが逃げてるところ。
蒼天劉備は比較的うざくないと思っていたけれど、やっぱりうざいね、この人。

「時の地平線」も同じ辺りで、開戦を説くために孔明が呉に乗り込んでいったところ。
この孔明、正装するとどう見ても女でなぁ……服装も髪型も。
そんでもって曹操が鋭い顔つきのごつい武人で、この二人が戦場で邂逅したりするもんだから、どうしても私にはBASARAの朱里と更紗に見えてしまってなぁ。。。
普段の悩める青年孔明と鮮やかに呉を説き伏せる説客孔明が全然融合してなくて違和感。
ちなみにこちらの周瑜は黒髪長髪の美形でサナトリウム的に血を吐く。見た目には江森孔明、というか小林智美画伯の孔明にそっくり。

近頃スピードが落ちてきたらせん三国志です。





最近買った本 [本]

普段雑誌は買いませんが、選手名鑑が欲しかったので購入。

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○○名鑑の類いが大好きです。
舐めまわすように読み込みます。

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山本夏彦に洗脳されているので、お気に入りの角川ビギナーズ・クラシックスシリーズから4冊購入。
いずれも物語ではないので順を追って精読する必要はなく、ぱらぱらと気になる部分を拾い読みしています。





孔明人形 [日記]

ハリケーンズ戦の後、渋谷へ移動して暁斎展を観たのですが、その前にヒカリエの「川本喜八郎人形ギャラリー」へ立ち寄りました。

川本先生の人形の大部分は飯田市の川本喜八郎人形美術館に収蔵されているのですが、一部は渋谷区が収蔵しています。
その中で30体~40体を選んでテーマに応じて展示しているのがこのギャラリー。
近くに用事があったら是非立ち寄りたいと思っていました。

こじんまりとした展示スペースですが、タダでふらっと入れるのがいい。
さすが渋谷区。余裕があるなぁ、といった感じ。
12月に展示の入れ替えがあって、今は三国志の人形だと千里行をテーマに、関羽、張飛、夏候惇、関平が展示されています。あとは十常侍の一部と何皇后、皇子二人、黄巾党三兄弟も。

平家物語の方は何といっても知盛がかっこいい。
ボンクラだらけの平家の御曹司の中で、珍しく骨のある知将。
歌舞伎でも碇(いかり)知盛として有名ですね。
「波の下にも都のさぶらふぞ」と慰める二位の尼に抱かれて安徳帝が入水され、平家一門次々と討たれ、あるいは海に沈むのを見届けると、「見るべきほどのことは見つ」と潔く海に身を投げる。
その際、浮かび上がってこないように鎧を二領着たとも、碇を体につないでいたとも。
あっぱれ平家の貴公子。


一通り見て帰ろうとしたときにですね、入り口に置かれたチラシが目に入りまして。
なんかワークショップをやるらしくて。
人形の構造やからくりについての説明があって、実際に人形にも触れられるらしい。
そんでもって。
なんと、孔明と写真が撮れるというではないですか。

これと!
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そ、それは……撮りたいかも。
別に孔明ファンじゃないけど。
三国志好きにとって孔明というのは、好き嫌いは別にしても特別な存在であることは変わらないと思う。
しかも、この川本孔明人形からあの江森三国志や白井三国志が生まれたのかと思うと特別感は増すというもの。

行ってあげてもよくってよ、と日付を見ると、なんと翌日ではないですか……。
ただでさえあまり近づきたくない渋谷に二日連続で行くなんてバカだ。
新幹線や飛行機を使うわけではないけれど、数百円ではない交通費を払って孔明のためだけに行くのはバカだ。
そうだそうだ、そんなバカなことをしている余裕はないのだ。
私は明日、しっとりしてしまった布団を干さねばならぬ。

でも孔明と一緒に写真撮れるんだよ。
普段はガラス越しにしか見られなくて撮影禁止の孔明だよ。
20年くらい前に川本喜八郎人形展に行って、そよ風に衣装と白羽扇をなびかせる姿を見て、どっひゃー、すかしてやがんな、と思った記憶が蘇ったけれど、写真は撮れなかったもの。

いやでもバカだろ。
それだけのために二日連続で渋谷に行くのはバカだろ。
別にそこまで孔明好きじゃないし。
いやでもあの孔明は……(エンドレス)

で、思い切って行っちゃいました。
われながらバカだなーと思いつつ。

でもね、行ってよかったよ。
2ショットはもちろん、何枚も写真を撮りまくったよ。
「孔明がお好きなんですか」と係の方に聞かれて「いえ、そういうわけではないです」ときっぱり否定したけれどもその行為はどう見ても孔明さま大好きなオタクであった。

人形劇の撮影に使われた方の人形は飯田市の美術館に収蔵されていて、渋谷区にあるのは別の1体だけれども、まぎれもなく川本先生の孔明人形であり、正直私には違いがわからん。

黒い背景に同化している黒孔明。。。
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ぎゃ、こっち見てる!
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1000年に一度の天才軍師との2ショットに緊張ぎみです。
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撮影の後は川本喜八郎のアトリエで人形を作っていたというお二方から色々とお話をうかがいました。
見本の人形にも触らせていただいたのですが、手足は意外にもポリウレタン製で柔らかく自由に形を変えられて、撮影の時には実際にモノを握らせていたそうです。
頭のからくりは文楽にそっくりでした。
顔は張り子で、塗料などを塗り重ねて汚れに強くできているそうです。

川本先生作のこんなお人形もありました。
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かわいい。。。

展示替えがあったらまた行こうと思います。





これぞ暁斎! [美術館/博物館]

ラグビーの後は渋谷へ移動してBunkamuraで開催中の「ゴールドマンコレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力」展を観てきました。

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世界に認めてもらわないと自国の文化に自信を持てない日本人の精神が云々……という話はまあここではいたすまい。

土曜日の4時頃の入館で、それなりに人はいますが大混雑というほどでもない。
ただ、版画作品など小品が多いので、近くでじっくり見ようと思うと少し待たなければいけません。
私は遠くから眺めて興味を惹かれなければあっさりあきらめます。

猫やカエルを擬人化したユーモラスな作品が可愛い。
河童が「SHIRICOTAMA」なんてお勉強している化々学校などなど戯画がたくさん。

私のお気に入りは鐘馗さまシリーズ。
鐘馗さまはお酒が大好きでおっかない顔をした道教の神様です。
玄宗皇帝の病の原因である鬼を退治したとかなんとか。
そんなわけで鬼退治の姿として描かれることが多いですが、中でもとびきりステキなのがこちらの「鬼を蹴り上げる鍾馗」の絵です。
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蹴り上げる勢いで浮き上がる衣服の流れといい、掛け軸の高さいっぱいに宙に浮く子鬼の「きゃーん」と泣いていそうな格好といい、ユーモラスでリズム感があってカワイイ。
迷わずポストカードを買いました。

一部春画コーナーもあって面白かった。
誇張していてコミカルではあるのだけれど、おおらかなエロさがいい。

子供連れに配慮して看板が立ててあったけど、実際に親が「ここは飛ばしましょう」と言う時になんと説明するのだろうなぁ、とちょっと気になった。
「まだ早いからね」とか「ここは大人向けだから」とか言うんだろうけど、子供はそれで納得するのだろうか。
余計見たくなるのが子供心というものだ。
ここはなにかとんちをきかせたいところだけれど、私には何も思い浮かばない。

暁斎暁斎、すべて暁斎。
楽しい展示でした。





サンウルブズ×ハリケーンズ [ラグビー]

サンウルブズの今シーズン初戦、ハリケーンズ戦に行ってきました。
最下位チームの初戦が昨年王者って、血も涙もねぇな、と思うけど、新参者の扱いの酷さはラグビー界の身分制度の中では珍しくもないのでまあこんなもんでしょ。

正面入り口付近で、オフィシャルスーツを着た田中フミにいきなり遭遇。
おおっ、と思ったが、移動中にファンに囲まれて困惑気味だったので私は遠慮して素通り。
今思えば「きゃー、フミだ! 握手してくださぁーい!」と年甲斐もなく黄色い声を上げて手を差し出したら握手くらいできたかもしれない。
今度チャンスがあったら挑戦してみよう。

先着10,000名に配布されるという応援用の手袋が欲しかったので、まずは入場。
もちろん手袋は入手。

ちょうど私が席に着いたころに特別イベントのMAN WITH A MISSIONライブをやっていたけれど、現在の音楽シーンにまったくついていけていない私はさっぱり興味がないので、あー、やってるなー、程度であった。

誰もいなくなった後のステージ。
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座席に荷物を置いてから、再び外に出る。
まずはファンクラブのくじ引きへ。
試合後に選手とハイタッチができる券とか、サイン入りボールとかがもらえるらしいけど、私は残念賞のステッカーでした。

オフィシャルグッズは特に欲しいものがなく、テイジンのスーツを着た選手たちのポスターがかっけーなぁと眺める。
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選手着用モデルのグレーのパーカーがかっこよくて欲しいんだけど、着る機会がなさそうなのであきらめる。
(オレンジのラインがかわいいんだ)
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最終的にカンタベリーのサンウルブズマフラータオルを購入。
汗を拭けるだけでなく、日除けにもなって便利。

戦利品一式。
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右上のはJsportsが配っていたフェイスペイント用シール。
シールだとすぐはがせていいよね。

今シーズンから登場のマスコットキャラクター、ウルビーくん。
と、見向きもしないコーチ陣。
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試合前のウォーミングアップをするハリケーンズのみなさん。
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同じくサンウルブズのみなさん。
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チアリーダーチームも結成されたようですが、この寒いなか腹を出して大丈夫かと心配になる。

さあ、試合開始です。
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満員御礼、とは言えないけれど、バックスタンドはまずまずの入り。
でもメインスタンドのS席の外側の方は空席がかなりありました。

遠くの方で行われるスクラム。
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スクラムは良かったね!
押し込んでいる場面もあったし、なによりも自分たちのスクラムに自信を持っているところがかっこいいです。

ラインアウトも昨シーズンに比べるとかなり安定しているように見える。
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飛びます。
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試合の結果はまあ予想通りの大敗でしたが、こんなもんじゃないですかね。
山ほどトライをとられたけど、こっちも3トライあげられたんだからいいじゃない。

今シーズンは始まったばかり。
サンウルブズの皆さん、応援してます!!




完本 文語文 [本]

三国志とか三島とか佐藤優とか、立て続けに古典への示唆を受けた結果、amazonの神のご宣託によりこの本を読むに至りました。

「完本 文語文」 山本夏彦



ご無沙汰しておりました、山本翁。
「年を歴た鰐の話」以来でございますねぇ。

山本夏彦の本は2,3冊しか読んでいないのだけれど、私が歌舞伎を観るようになったのは紛れもなくこの人がきっかけで、受けた影響は計り知れない。

この本は日本伝統の文語文について書いた文章をまとめたもの。
引用される名文の美しさ、リズムの心地よさ。
やんぬるかな、その伝統は明治で途絶えてしまったと山本翁は嘆く。
いまさら文語文に戻れと言っているわけではない。それはもはや不可能である。
父の影響で明治の文章に親しんだ山本翁ですら、文語文は書けないという。
しかしまだ滅びきっていない語彙がある。それらを惜しむ。

百人一首すら暗誦できず、四書五経の素読など受けたことがない私の身において、文語文は骨にも肉にもなっていない。
しかし血の数滴くらいには混ざっていると思いたい。

解説の徳田孝夫の言葉に希望を見る。
「われわれはもう二度と文語文に戻れない。だが古人に学び古典を写し、型を覚えることはまだ可能である。」

四書五経は無謀すぎるとして、史記全巻とは言わないまでも、古来より規範と言われたその文章に触れることは無駄ではあるまい。
でもいきなりちくまとか岩波とかに手を出すとすぐ挫折しそうだから、まずは故事成語を知るレベルを目指すということで横光史記から始めるのはどうでしょう。



まだ三国志も読み終わってないのに!





朗読CD [本]

漢学の素養とかそんなことを考える流れで、Amazonの神から「こういうのも読んでみたら」と勧められて、山本夏彦の「完本・文語文」を読みました。
この本のことは後日改めて記事にするとして、音としての日本語の心地よさというものを感じたくなって、以前から愛聴している「山月記」「名人伝」「牛人」の朗読CDを聞いた。

江守徹の朗読でね、すごくいいんだよ。
抑揚といい、緩急といい、豊かだけれどわざとらしくない。
もう何度も聞いているので頭に刷り込まれている。
私にとって、中島敦の上記3作品は江守徹の朗読とほぼ一体化していると言っても過言ではない。
物語を耳から聞く、ということはいいものだなぁ、としみじみと感じた。

朗読には朗読の良さがあるけれど、しかし難点もある。
それは朗読者との相性があるということ。
作品と朗読者との相性もあるし、聞く人と朗読者との相性もある。
私の経験上、これは合わないことの方が多い。

夏目漱石、梶井基次郎、藤沢周平など、図書館にある朗読CDを他にもいくつか借りたことがあるけれど、何度も聞くほどに惚れ込んだのは江森徹の中島敦のみ。
ほとんどが途中で聞くのをやめた。

先日、図書館で「李陵」の朗読CDを借りてきた。
朗読は日下武史。
長いのでまだ途中までしか聞いていないけれど、これもなかなかいいぞ。
江森徹とはまた違った淡々とした読み方が、西の不毛地帯を北征する絶望的な行軍に合っている。

もう一つ借りたのが雨月物語。
これは好悪が半々といったところ。
重みのある女性の声は雨月物語の雰囲気に合っているのですが、抑揚をつけすぎて鬱陶しい場面が多い。
例えば、私が一番好きな「青頭巾」の中でも、極めつけだと思うこの箇所。

「其肉の腐り爛るるを吝(おし)みて、肉を吸ひ骨を嘗めて、はた喫(くら)ひつくしぬ」

腐った死体を喰らうというおぞましい行為をあえて淡々と描写しつつも、死体を貪る坊さんの心中の慟哭が聞こえてくるような名文だと私は思っているのですが、この箇所を某国の国営テレビに出てくるカリスマ女性アナウンサーのような激しい抑揚で読むので、その調子に驚いて内容の凄まじさが消えてしまう。
私は怒りすら覚えた。

逆に、破れ寺にて深夜、鬼となった坊さんが客僧を探して「禿驢いづくに隠れけん、ここもとにこそありつれ」と叫んで走り回る場面は緊迫感があってよかった。
ここは抑揚というよりは緩急がついているからいいのかもしれない。

おしなべて朗読というものはあまり感情をこめない方がいいらしい。

さて、この雨月物語のCD全5枚組のうち1枚は河合隼雄による談話解説が入っています。
これが実にいい!
河合先生は稀代の聞き上手であるだけでなく、話し上手でもあられる。
柔らかな語り口もいいし、お話の内容がすこぶる面白い。
「こういう人、今の世の中にもたくさんいますね」
「主人公のように、運命から逃れよう逃れようとすると、かえって運命に近づいて行ってしまうということはよくあります」
聞きながら思わず大きく頷いたり、唸ったりしてしまう。
5枚全部、河合先生の解説でよかったんじゃないか?





古川日出男訳 平家物語 [本]

池澤夏樹プロデュースの日本文学全集のうちの1巻として、古川日出男訳の平家物語が出ていることを知った。



昨日、図書館で手に取ってみたのだけれど、厚さが6~7センチくらいある大著。
総ページ数、908ページ。
大変な大仕事です。お疲れ様でした。

原文を一切省略することなく、すべて訳出したとのこと。
それでいて現代の琵琶法師を目指す語り口。
さすが古川日出男。

たぶん間違いなく面白いだろうし、感謝したいくらいの人選だし、もし私が平家物語の全文を読みたいと思ったらこの古川訳を読むだろうけれど、それでも私が本書を読むことはおそらくないと思う。

この大著を読み切るほどには平家物語を愛していないから。

後世に残すべき遺産として古川日出男が完訳してくれた意義は疑いようもなくて本当にあっぱれなんだけれども、さて、どんな人がこの本を読むのかなぁ、と考えてしまった。

平家物語を読んでみたい、という程度の人はこの枕になりそうな本を選ぶことはないだろうし、原文を愛する人は今さら現代語訳なんて読まないだろう。
そうなると、原文はもとより、あらゆる訳を読みつくしたマニアが「どれどれどんな風に訳しているか見てやれ」と読むくらいか。
あるいは熱烈な古川日出男ファン。

せっかくの大仕事なのに、あんまり人の目に触れることがなさそうですごく残念だなぁ、と思ってしまった。
ま、私の心配するこっちゃないですがね。





三島のテープ [つぶやき]

三島由紀夫が自殺する9か月前に受けたインタビューの録音テープがTBS内で見つかったとのこと。
全体の四分の一ほどを抜粋して編集した音声がTBS News i にアップされているので聞いてみました。

前半は自己完結している抽象的な話が多く、何かを言っているようで実は何も言っていないように聞こえてしまう。
インタビュアーも「○○○○とはどういうことですか?」と聞くのだけれど、三島はちゃんと説明しない。
説明することを面倒だと思っているのかもしれない。

終わりのころに「現代日本で一番嫌なところはどんなところですか」という質問に対して「偽善」と答え、その最たるものが平和憲法だと語る。
右翼キター! と思ったのだが、実はここから先が重要であった。

戦後のヤミ米を取り締まる食糧管理法をあくまで守り通して栄養失調で亡くなった裁判官を例に出して、憲法9条は日本人に死ねと言っているのと同じことだ、と三島は言う。
ただし、1項の平和主義を否定しているのではない。人類の平和は素晴らしいことだ。
問題は2項だ。これは日本人に死ねと言っているのと同じである。
それなのに一部の法学者は解釈をねじまげて自衛隊を容認する。
こういう誤魔化しが自分には耐えられない。
……というのが三島の主張らしい。

三島は一体、何を目指していたのか、さっぱりわからなかったのだけれど、これを聞いてようやくその思想の一部が理解できたような気がした。
あくまで一部ですけど。

私が聞きたかった「漢文の教養がなくなってから日本人の文章はだらしがなくなった云々」の話は収録されていなかったのが残念。まあ、これはこれで面白かったかな。

興味のある方はどうぞ。
3月6日夜までの限定公開です。
http://news.tbs.co.jp/newsi_sp/info/mishima.html

ちなみに「群像3月号」でインタビューの内容を文字に起こしたものが掲載されているそうです。
みんな興味があるみたいで、ちょっと手に入りづらくなっている。
私も日本人の文体と思想に関する話を読んでみたいんだけど、買うほどじゃないんだよなぁ。