So-net無料ブログ作成

中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌 [本]

「中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌」 高橋和夫



複雑な中東情勢を過去にさかのぼって解きほぐしつつ、2016年の出版当時の「今の中東」を解説した本、かな。
絶賛するほどではないけど、わかりやすく面白かったです。
本書ではイランとサウジアラビアに焦点を当てていて、だいぶ理解が深まったと思います。

諸悪の根源はサイクス・ピコ協定で勝手に線を引いたイギリスとフランスであり、その後のアメリカの自分勝手な外交政策がさらに混乱を悪化させた、ということがよくわかる。
そしてそれが巡り巡って現在の移民問題やテロとしてブーメランのように返ってきているという皮肉。

勝手に線を引いて国としてまとまろうとするから混乱するのであって、もとの部族社会に戻るのが安定への道なのではないか、と著者は見ている。
私もこれに同意する。
アラブには遊牧民の部族社会が良く似合う。
……とか、映画とか小説とかの断片的なイメージしか知らないくせに言ってみる。

でもね、アラブってやっぱり魅力的だと思うよ。

Penの2/1号はアラブ特集でね。
建築なんか本当に美しいと思います。見てみたいなぁ。
あと、アラブのよくある家の造りにモエた。
必ず中庭があって、半テラスの居間みたいなのがあったりして。
モエーーー。
こんなお宅にお邪魔してお茶をいただいてみたいものです。




コメント(0) 

北朝鮮は「悪」じゃない [本]

「北朝鮮は「悪」じゃない」 鈴木衛士



元航空自衛隊の情報幹部による北朝鮮情勢分析。
3冊読んだ北朝鮮本の中では、これが一番冷静で説得力がある分析をしていると思った。

朝鮮半島は今でも第二次世界大戦の世界にいるということ、北朝鮮と韓国の対立は兄弟げんかのようなもので、だからこそタチが悪いということ、南北問題とは実質的に米中問題であるということ。
色々と腑に落ちる指摘です。

日本のマスコミでは絶対に報道されないであろう、国連での北朝鮮側の反論が興味深い。

「世界的に今まで2054回の核実験が行われている。その99.9%は5つの国連安保理の常任理事国によるものである。この開発に遅れた国が自国を守るために同様の兵器を持とうとするのは当然の権利だ」

核開発の是非はともかくとして、70年以上前の戦争の戦勝国が牛耳る国連ひいては世界秩序に対する異議申し立てという点では、いまだに敗戦国として一段下に扱われる日本の国民として、一理あると思ってしまう。

体制の維持に躍起になっている北朝鮮よりも、日本の領土を虎視眈々と狙う中国の方がよほど脅威だと著者は警告する。
そして孫子の「囲む師は必ず欠く(敵を包囲したら必ず一か所逃げ道を作っておく。追い詰められた敵は何をするかわからない)」という言葉を引いて、日本が独自外交で北朝鮮とアメリカの仲介役を買って出ることが、その後の世界情勢において日本の存在感を高めることにつながる、と提言する。

正義とか善悪とかの価値基準を除外して、単純に損得勘定で考えて、朝鮮半島に進出してきた中国と直接対面するよりは、北朝鮮にはとりあえず今の体制のままでいてもらったほうが日本の国益に叶う、という現実路線に私は一票。
米朝協議がうまくいったとして、現体制の北の核を本当に管理下におけるのかという疑問はあるけれど、朝鮮半島の戦争に巻き込まれず、かつ中国との直接対決を避けるためにはこれが日本としての最適解ではないか。

ちなみに佐藤優の対談本では、問題は棚上げしておいて、利害が一致するところから中国と協調していく路線を推奨していた。
ついでに記事の本文は読んでいないけど、日経電子版で田原総一朗は、慰安婦問題を棚上げして韓国と仲良くしろ、と言っていた。
とにかくアメリカと歩調を合わせることが大切、という人もいる。

色んな考えがありますが、現在、日本の外交はどの道を模索しているのでしょうか。
まさか手をこまねいて見ているだけで何にもしていないなんてことは………ないと信じたい。




コメント(0) 

ライカでグッドバイ [本]

「ライカでグッドバイ」 青木冨貴子



表紙の写真「安全への逃避」でピュリツァ―賞をとった「日本のキャパ」沢田教一の34年の生涯を追ったノンフィクション。
清水潔のおすすめより。

沢田教一がカンボジアで散ったのが1970年、本書が文芸春秋社から刊行されたのが1981年、文春文庫を経て、ちくま文庫で復刊したのが2013年。
長く読み継がれる本にはやはりそれだけの理由がある。

面白い、と言うと内容的には不謹慎なのかもしれませんが、大変な良書です。
抑制のきいたクールな文章はとても読みやすく、混乱のベトナム戦争と沢田教一の仕事ぶりが鮮やかに浮かび上がります。
泥沼のベトナム戦争の悲惨さはもとより、その戦争に引き寄せられるジャーナリストたちの野心と栄光など、戦争の別の面をも見せてくれます。

私が生まれる前に終結しているベトナム戦争ですが、今でもよく引き合いに出される出来事であり、それだけ世界に、なかんずくアメリカに影響を与えた戦争だったはずなのに、著者もあとがきで書いている通り、アメリカはこの戦争から何も学んでいないように見える。

しかし改めてベトナムって国はすごいと思います。
世界最強のアメリカとガチンコ勝負して実質的に勝ってるんだものなぁ。
その後の外交もなかなかしたたかだという記事をどこかで読んだことがある。
日本も学べるところがあるんじゃないかしらね。


コメント(0) 

中東と北朝鮮 [本]

中東情勢はよくニュースになるけれど、イランだとかイラクだとか、リビアだとかシリアだとか、スンニだとかシーアだとか、なんかよくわかんない。
ていうか、全然わかんない。

というわけで、こういう本を読んでみました。

「中東から世界が見える――イラク戦争から「アラブの春」へ 」 酒井啓子



これは大変良書だと思います。
岩波ジュニア新書という、おそらく中高生を対象にしたレーベルから出ていて、複雑怪奇な中東情勢を平易な言葉で、しかし慎重に、とてもわかりやすく説明してくれます。
アメリカが軍事力で価値観を押し付けたイラク戦争を起点として、パレスチナ問題の起源から「アラブの春」のその後までを網羅。
わかったような気にさせてくれます。
手元に置いて、中東に関するニュースなどでわからなくなった時に都度参照したいと思います。


似たようなタイトルで「中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌」という本もあって、NHKから出ているからあんまり気が進まないんだけれど、わかりやすいと大変評判がいいので、そのうち読んでみようと思います。


世界情勢といったら、日本人としてやっぱり気になるのが北朝鮮です。
私は日経オンラインの「早読み 深読み 朝鮮半島」という連載を毎回興味深く読んでいるのですが、アメリカはもうすぐ動くぞ動くぞとずっと言われているにも関わらず、現実には平昌オリンピックが終わるまでは手を出さない模様。
朝鮮半島の二つの国家をこき下ろしているようにも見えるこの連載しか読んでいないのはとても偏った理解になるのではないかと不安になってきた。

で、つい読んでしまう佐藤優。

「核と戦争のリスク 北朝鮮・アメリカ・日本・中国 動乱の世界情勢を読む」  佐藤優、薮中三十二



日経と朝日でバランスを取ってみました。
元外務省主任分析官と元外務省事務次官の対談。
外交のプロはどう見ているのか。

ものすごく乱暴にまとめてしまうと、百万単位の犠牲が出ると予想されている朝鮮半島での戦争にアメリカはそうそう踏み切れないのではないか。しかしトランプと金正恩との間の行き違いによって暴発してしまう可能性はある。日本も他人事ではないのだから、そうならないように外交でなんとかしなくちゃならん。
……という感じでしょうか。(間違っていたらごめんなさい)

で、今度は軍事の専門家はどう見ているのか、こんな本を読んでみました。

「北朝鮮がアメリカと戦争する日 最大級の国難が日本を襲う」 香田洋二



元海上自衛隊No.2はこう見る。
アメリカの北朝鮮攻撃は不可避。もし仮に北朝鮮を核保有国と認めてしまったら、世界中への核の拡散はまぬがれない。そのような地獄の世界を招かないために、北朝鮮の核は無力化しなければならない。
犠牲を最小限に抑えて北の核を無力化するアメリカの攻撃は可能。しかし日本にも犠牲は出るだろう。防衛体制の強化が急務だ。

さて、世界は今、どちらへ向かって動いているのでしょうか?
犠牲を出さず、核の拡散を防ぐ上手い方法ってないんですかねぇ。
そんな魔法のような方法があったらとっくに誰かがやってるか。

今日のこの何でもない一日は、実はとても有難い輝く一日なのかもしれません。


コメント(0) 

アルスラーン戦記 [本]

アルスラーン戦記が16巻で完結したことを読売新聞の書評欄で知った。
中学生の頃に友達から借りて読んだことを思い出します。
その時点ですでに刊行が止まっていて、たぶん田中芳樹は完結させる気がないのだろうな、と思っていたけれど、マンガ化などで人気が再燃したことで続きを書く気になったのでしょうか。
改めて全巻読んでみたい気もしますが、読みたいものがありすぎてそこまで手が回らない気がする。

書評を読めばもっと本を読みたいと思い、寄席に行けばもっと落語を聞きたいと思い、ライブに行けばもっと音楽を聞きたいと思う。
スポーツも映画もある。
世の中には消費しきれないほどの娯楽があって、すべてを楽しみつくすには人生はあまりにも短いと思う一方で、果たしてそれらの娯楽は人生の時間を費やすに値する大事なものなのか、とふと我に返る。
しかしそもそも人生の価値って何だ?
人生において、何をもってして価値あると見なすのか?

そんなことを考える時間を少しでも減らすために、私たちは必死で娯楽を消費するのかもしれません。


コメント(0) 

2017年読書総括 [本]

あけましておめでとうございます。
新年恒例の読書総括です。

2017年の読書総数は60冊でした。
冊数としては近年の中では悪くない数字ですが、各タイトルを眺めてみると本当にしょうもない本ばかりで、誰にということもないけれど申し訳ない気持ちになりました。

その中でこれは良かったなぁというベスト3は以下の通り。

殺人犯はそこにいる」 清水潔
久しぶりにページを繰る手が止まらないという経験をしました。

完本 文語文」 山本夏彦
この本のせいで角川ビギナーズクラシックスシリーズを何冊も買うはめになりました。

狂うひと」 梯久美子
執念に満ちた堂々の大著。読み応えあり。


今年は冊数は少なくてもいいから手応えのある本を中心に読んでいきたいと思っています。
(でもたぶんまたしょうもない本を手に取ってしまう私の心の弱さよ……)


コメント(0) 

年末恒例ドロドロ愛憎劇 [本]

年末恒例の物語といえば赤穂浪士の討ち入りですが、最近でもテレビでなんかしら映画とかやったりしてるんでしょうかどうでしょうか。
昨年の年末に敢行した江森三国志一気読みが私の中では濃密な記憶となっていて、この時期になると「ああ、あの季節だなぁ」と思うようになりました。
印象的な周瑜の弔問は雪のシーンだし、なんとなく作品全体が夏と言うよりは冬のイメージ。
だからこそ南蛮討伐がバカンスの風合いを帯びるわけですが。

と、そんなことを考えていたら、Kindle版の1,2巻がなんと108円の大特価!
迷わずポチリ。
でもこの復刻版って挿絵が入ってないんだよねー。
挿絵がまた震えがくるくらいいいのになぁ。
どうせなら雑誌掲載時の挿絵を完全収録して復刻してくれないかなぁ。
多少高くても買うんだがなぁ。

あ、そうそう、私は車の中では全5500曲くらい入っているiPodを完全シャッフルして聞いているのですが、たまに天の華・地の風のドラマCDが紛れ込んできてぎょっとします。
でも思わず聞いちゃう。
あれも続き出してくれないかなぁ。
魏延のセリフが聞きたいよぅ。



コメント(0) 

マイナス・ゼロ [本]

「マイナス・ゼロ」 広瀬正



文庫で復刻されてからずっと読もう読もうと思っていてようやく読んだ。
読みやすいしそれなりに面白かったけど、必読かというとどうかなぁ。
日本SF史の上で重要な作品だからと言われればそうなのかもしれない。

以下、おもいっきりネタバレしながらの感想なので、未読の方はご注意ください。




タイムマシンSFなんですが、SF部分を楽しむというよりは、昭和初期の東京の雰囲気を楽しむ部分が大きいと思う。
そして男のロマンが詰まっている。
そこのところにスポットをあてたい。

かつて憧れた綺麗なお姉さんが、タイムマシンで現在に現れる。
あの頃は子ども扱いされていた自分は31歳になっていて、方やお姉さんは17歳のうら若き乙女のまま。
しかも頼れるのは自分だけ。
その後色々あって主人公は昭和初期に飛んでしまい、そこでの生活を余儀なくされるが、ここでも別の女性と懇ろになり、しかもそれが「未来に残してきたあなたの恋人に悪いわ」とか言って遠慮がちな都合のいい女。しかも火事で亡くなってしまう。
色々あって予定よりも長い期間、元いた時代に戻れない主人公だが、今度は近所に住む美人女優と結婚。
これが巡り巡ってやってきた、最初の17歳のお姉さんだったことが最終的に判明するのだけれども、けっこう初期の頃にバレバレ。
しかも、17歳の乙女と再会して昭和初期に飛んでしまうまでのたった3日のうちに、ちゃっかり妊娠させていたことも後に発覚。
いつの間に仕込んだんだー。

戦時中の17歳の女学生が男と旅館で二人になって「おビールはいかが?」とか勧めるのは普通のことだったのだろうか?
色々とツッコミどころがありすぎる。

タイムマシンで飛んでいった先の昭和初期の世界でやっかいになるカシラ一家はそれぞれに味があって楽しい。
しかし戦前どころか昭和末期の銀座すら知らない私にとって、そのあたりのノスタルジーはよくわからない。

とりあえず読んだ、ということで私はとても満足です。



コメント(0) 

コンビニ人間 [本]

「コンビニ人間」 村田沙耶香



実に今更ながらですが、読みました。
芥川賞受賞時から気になっていたのですが、あまのじゃくなもんで買うのは悔しくて、図書館で借りられるまで待っていました。

主人公の古倉さんや白羽さんとたいして違わない境遇の私には実に痛い言葉がたくさん。
感情が完全に剥落している古倉さんよりも、ムラの一員として認められたいのにどうしてもそうなれないことに苦しさや憤りを感じている白羽さんの方が私には近い。

人生や世の中にあまり多くを期待していない虚無的な諦観が漂うあたり、津村作品と似ていなくもないが、こっちの方が病んでいる感じはする。
不思議なのが、Amazonのレビューを見る限り、同じ芥川賞受賞作の「ポトスライムの舟」はあまり共感を呼んでいないのに対して、「コンビニ人間」の方が好意的な評が多いこと。
どちらも非正規雇用の独身女の話で、決定的な解決には至っていないのは同じ。
「コンビニ人間」のラストの病的な安心感よりも「ポトスライムの舟」の爽やかな読後感の方が私は好きなんだけど、世の中の人はそんなに病んでいるのでしょうか。

文章はくせがなくてすっきりしていてとても読みやすかったです。
そのうち他の村田作品も読んでみようと思います。



コメント(0) 

狂うひと [本]

「狂うひと」 梯久美子



ついに読み終えました。
梯さんの文章はとても明晰で無駄がなく読みやすいので、読んでいて疲れるということはないのですが、内容の濃密さと本の厚みとでやはり時間がかかりました。

私は「死の棘」を含めて島尾敏雄作品は一切読んだことがなく、この夫婦のこともまったく知らずに本書を読みました。
「死の棘」そのものや評論などを知ったうえで読んだ方がもしかしたら驚きが大きいのかもしれませんが、何の予備知識もなく読んでも十分に面白いし、知らないからこそ味わえる面白さもあると思う。

なんともすさまじい数十年におよぶ夫婦の世界。
あらゆることを記録せずにはいられない夫と、それを読み、保管し続けた妻。
そしてその膨大な資料を詳細につき合わせて事実を確認していく梯さん。
夫婦の関係もすさまじいが、取材する梯さんの執念のようなものもまたすごい。
本書に書き上げた文章だけでなく、その背後にある圧倒的な取材量に驚嘆せずにはいられない。

読売新聞の記事か何かで、梯さんが「独身の自分に夫婦を描けるのか、という迷いがあった」と語っていたが、むしろだからこそ、自分の夫婦関係を投影することなく、この二人を書けたのではないかと思う。

梯さんの執念の取材ぶりは、まるで魔に魅入られたようにこの夫婦、特にミホに魅了されてしまったように思える。
異様でありながら、どうしても引き込まれずにいられない不思議な魅力のあった人なのだろう。
まあしかし、私の身の周りに実際こういう人がいたら、ちょっと不気味で近寄りがたいだろうなぁ、と思ってしまうのでした。


コメント(0)