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さらば、我が愛 覇王別姫 [映画]



20数年振りに観ました。
やっぱりすごい映画でした。
初めて観た当時はこの映画の描く世界の濃厚さにノックアウトされましたが、かなりいい歳になった今見ると、レスリー・チャンの切ないほどの美しさにノックアウトされます。

京劇の演目、覇王別姫を演じる人気役者の二人は、幼い頃からほとんど虐待のような厳しい修行に耐えて今の地位を築いた。
舞台を下りても覇王と虞姫のようにいつも二人でいたいと願う蝶衣(美しい名前だ)。
舞台と私生活は別だと考える小樓。
小樓の妻となる元遊女の菊仙(こちらも美しい名前)。
三人の愛憎劇を中心に、激動の中国近代史が描かれます。

少年時代の蝶衣を演じる子役がこれまたよくぞ見つけてきたと感嘆するほどの美しさで、老宦官のグロテスクな淫猥さとの対比が強烈。
京劇のパトロンである袁先生のねちこい視線。
美しい顔をして非情な革命信奉者となる教え子の裏切り。
文革の不可解、などなど。
中国特有の派手な色使いとともにねっとりとした物語が展開されていきます。

日本軍がただの悪逆非道の侵略者としてではなく、むしろ京劇の伝統を理解するジェントルマンとして描かれているのが印象的。
何か興行的な配慮があったのでしょうか……

私はどうしても、報われない愛に生きるしかない蝶衣の切なさに寄り添ってしまうため、小樓を挟んで対立する菊仙に対して、女性の強かないやらしさというものばかりを感じてしまうのだけれど、一人の女が愛する男と普通の家庭を築いて普通の幸せを手に入れたいと願う気持ちは分からなくはない。
阿片の後遺症に苦しむ蝶衣に対して見せる菊仙の母性愛は美しい。
二人の男女が取り合うほどの男かと首を傾げてしまう小樓の平凡さが、ますます虚しさを際立てる。

虞姫を演じるレスリー・チャンの儚げでたおやかで、それでいて熱情を秘めた妖しいほどの美しさは筆舌に尽くしがたい。
幾人もの男を虜にしながらも、愛する男は舞台を下りれば妻のもとへ去ってしまう。
文革によって失われる京劇の伝統。
哀しみを分かち合おうと小樓を訪ねるが、夫婦で慰め合う二人の姿に、蝶衣は雨の中一人帰ってゆく。

3時間という大長編ですが、飽きることなく一気に観てしまいます。
10年後、主演のレスリー・チャンが投身自殺を遂げてしまうことを思うと、また胸に迫るものがあり、両性愛者を公言していた彼の心もまた、何かに引き裂かれていたのかと思わずにはいられません。


力は山を抜き気は世を蓋う

時に利あらず騅ゆかず

騅のゆかざるをいかにすべき

虞や虞や汝をいかにせん



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