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死者の書 [本]

さて、いよいよこの本の話をしよう。
折口信夫の「死者の書」である。

人文系の本を読む人だったら、折口の名前は年に3回くらいは目にすることがあるのではないかと思う。
私も名前くらいは知っていたし、勉強しなければいけないなぁとは思っていたのだけれど、
いかんせんこの方は学者なので、著作は基本的に論文なのである。
素人が面白半分で手を出して読みこなせるとは思えない。
そんな折口信夫の唯一と言っていい小説がこの「死者の書」。

数年前に本屋で岩波文庫版を手に取ったのが出会いだった。
折口信夫の名前、不穏なタイトル。
冒頭、墓の中で死者が静かに目覚める。
した した した。
覚醒する死者の頭に浮かぶのは、今も想い続ける女の名前。

こりゃいかん、と私は本を戻した。
立ち読みで中途半端に目を通すべき本ではない。
時間をかけてじっくりと取り組むべき本だ。
でも、その時の私は他に読む本をたくさん積み上げていて、これ以上増やしてはいけないと考えた。
ご縁があったらきっとまたどこかで出会えるでしょう……

そうして再び出会ったのは、Kindleの青空文庫版だった。
言葉づかいが難解で、気軽に読めるものではない。
しかし、読み始めると次第にその独特の世界に沈み込んで行く。
はっきり言って、よくわからない。
わからないけど、なんだか魅かれる。
ずっとずっと昔、まだ神と人とが近しく存在していた頃の世界。
自分自身の精神の中をずぶずぶと潜行した先に静かに横たわる世界。
懐かしさのようなものまで漂うほど。

読み終わった後、よくわからないけどすごい、と思った。
何がどうすごいのかわからないけど、ただ、すごい、と思った。
神か人かわからない何者かの魂が私の周りにしばらく漂っているように感じた。
それは五感の中でいうと、触感。肌で感じる感覚が一番近い。
もしかしたらそれは、今の私たちの感じる力の中で、最も衰えてしまった感覚なのかもしれない。

後日、中公文庫版と迷った末、出会いの岩波文庫版を購入。
注解が丁寧ですばらしい。
ただし注意書きがある。
ここにこの作品の魅力の一端が現れているので引用しよう。
「…折口信夫は「死者の書」において意図的に物語の時間経過を混乱させ、人名や場所の確定を曖昧にしている。以下に記した注解は物語の全体像を先取りし、物語の構造を前もって提示してしまうものである。折口が作品に込めたものを直に感じ取っていただくためには、まずは本編を通読された上で、注解を読みすすまれることが望ましいと思う。」
よくわからなくていいのである。
あえてそういう構造にしているのである。
そこが魅力と言っても過言ではないのである。

独特の美的感覚と言語世界をどうぞご堪能あれ。
もしもあなたがこの世界に魂を持って行かれてしまったら、その時は私が魂ごいの足ぶみをして差し上げよう。
あっし あっし あっし。





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コメント 2

けめこ

ぽちっとしたが、まずコンビニで
お金を払わなくてはならない。

ますむら・ひろしは
「らっし らっし」
っていってたよ。


by けめこ (2013-06-15 17:26) 

若隠居

ぽちっとしましたか。
未完の続編も興味深いです。
どういう話になる予定だったのかなぁ。
by 若隠居 (2013-06-17 13:10) 

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